父の背中を追って2年間の修業後、両親が立ち上げた「ベーカリーハイジ」を継いだ宮下真彦さん。創業から20年以上が経ち、今では年商約3億円、従業員40名を抱える、街いちばんの人気ベーカリーとなった。目の前にある大型スーパーは最大のライバルかと思いきや、スーパー帰りに立ち寄る客も多く、店内は常に賑わっている。
粉を挽く電動石臼に迎えられ店内に入ると、広い空間に約80種類のパンが並び、奥のキッチンから随時、焼き立てのパンが運ばれてくる。商品棚を埋めるのはアイデア満載のグルメなパンばかり。人気商品の「クレセント」は1日10回、焼き立てが登場し、300個を売り上げるという。
経営、商品開発、人材育成に日々忙しい宮下さんがRATIONAL製品に出会ったのは10年以上前。自家製のカレーフィリング、カスタードクリームなどを使った人気商品を増産したいと思っていたが、スタッフに負担が重くのしかかるのが気がかりだった。「『人の手と根性で乗り切る』時代でした。でも、もっといい方法があるはずだとも思っていて、そんな時にiVario Proを知りました」(宮下さん)。
圧力調理機能と調理作業のプログラム化は魅力だった。自家製フィリングを大量に仕込める上に調理時間も短縮できるし、レシピを詳細にプログラミングすることで、人の手に頼らずとも、常に同じ味を再現できる。
2024年、工場拡大を機に宮下さんは念願だったiVario Pro、そして2台目となるRATIONALのスチコン、iCombi Proを導入した。焼きムラがほとんどなくなったスチコンの進化にも驚いた。「生産効率が向上でき、商品もより店の個性を強調できるものにリニューアルできた」と話す。
ハイジの工房には、RATIONALの旧型スチコンが現役で稼働している。「10年前に購入して以来、毎日、十分すぎるほど働いてくれているため」導入コストはとっくに回収したと宮下さんは話す。「昔は職人の勘や経験を頼りに製造していましたが、最新機器を導入することで経験の差を埋めながら安定した品質が可能になりましたし、投資額回収を5年償却で考えれば、1ヶ月の金額は人件費より安いのです。機器の導入で作業に余裕ができれば、作業も丁寧になるし、お客様と向き合う時間もできる。結果、売上げアップにもつながるはずです」。
職場環境やスタッフのメンタル面にもプラスの変化がもたらされた。カレーやカスタードクリームをガス台で調理していた時は、工場内の温度がサウナ並みに上がっていたが、iVario Proでカスタードクリームとカレーを同時に調理するスタッフに聞いてみた。「同時調理していても暑くならないから夏の作業も楽でした。調理パンが浅くてかき混ぜやすいし、そもそも焦げつくことがないのでかき混ぜる回数も減りました。この場を離れることがあっても、設定温度になると自動的に加温が止まるので慌てることもありません」と作業の負担が減ったことが伺えた。
加えて良かったのが、失敗できないカレーフィリングやカスタードクリームなどの仕込みを、プログラム調理によって常に安定して仕上げられるという安心感がスタッフの不安やプレッシャーを取り除いた点だ。今ではスタッフに仕事を楽しみ、新しいことに挑戦してみようという気持ちも育ってきたようだ。
iVario ProとiCombi Pro、2台の機器導入で生産性は明らかに上がり、人件費の削減にもつながった。自動洗浄も作業時間の短縮に多いに役立っている。
iVario Proの活用でカスタードクリームは従来の銅鍋で炊いていた時の4倍量を一度に炊けるようになった。また、タッチパネルの操作でプログラム通りに進めれば、つきっきりでいる必要がなくなる。その間、他の作業もできる。アップルパイ用のアップルソテーは、バターを適度に焦がすのがポイントで、この“適度”がなかなか難しかったのだが、温度設定が可能になり約16kgのリンゴのソテーがわずか3~4分で完成する。銅鍋ではこの量を短時間でこなすのは難しく、時間がかかると火が入りすぎて食感が悪くなってしまうが、iVario Proの昇温スピードが短時間での調理を可能にしている。調理後はすぐにブラストチラーで冷やし、冷凍ストック。1日100個売れるアップルパイの製造に備えている。
人気のカレーパンを増産したいという思いが、iVario Pro導入のきっかけであったが、最新機器は増産だけでなく、より店の特徴を打ち出せる商品のリニューアルも後押しした。以前のカレーパンは、作業性を考えてフィリングに鶏挽き肉を使っていたが、圧力調理ができるようになり、牛肉100%に替えて”お肉ゴロゴロ“のカレーパンが完成した。しかも調理時間は以前の半分にまで短縮。「これまではカレーを担当するスタッフによって、味や状態にブレが生じていましたが、iVario Proでプログラムを組んだので、機器の指示に従えば誰でも同じ味、クオリティに仕上げられるようになりました」と宮下さんは話す。おいしくグレードアップしたカレーパンの売上げはさらに伸びている。
最新機器があることで現場にはワクワク感が生まれるし、働きたいと興味を持つ人も増えるだろう。宮下さん自身にも「もっとやってみたい」という思いが沸き、ひとつずつ技術を身につけながら、低温調理や真空調理などで自家製素材も増やすという目標ができた。「プログラムが充実すれば、店舗が増えたり、海外進出したりしても同じ品質が再現できます。スタッフもプログラム作りに熱心になってくれることを期待しています」。
人が成長し続ける環境を作れば、店は次世代に引き継がれていく。毎日の効率や安定性こそが本当のコストだと気づいた宮下さんは、「RATIONALの導入は人と未来への投資だった」と強調した。
有限会社ベーカリーハイジ
代表取締役社長 宮下 真彦氏
導入前の課題
生産数に限りがある
つきっきりの作業
過酷な作業環境(厨房内の温度上昇)
仕上がりのばらつき、焼きムラ
導入しているソリューション
iCombi Pro 6-1/1
iVario Pro 2-S
カスタマーベネフィット
生産性の向上
調理プログラムによる一貫した調理結果
高い調理品質
機器からの放熱を抑え、厨房環境の改善
iCombi Proの自動洗浄
既存メニューのクオリティアップ
人件費の削減